故 日下先生への弔辞 小沢名誉学園長

2011年08月15日

弔辞

青空に入道雲が浮かぶこんな日に、突然、君とのお別れの時がやってきてしまう事を、私は、無意識の中で予感していました。


     昨年の5月、病院で医者に、末期の胃がん、さらに、余命2カ月と診断されて以来、君は、「生きる」ということをあきらめず、最後まで病気と真剣に闘いました。この間、一度も取り乱す事もなく、一度も弱音をはくことも無く、私が見舞いに行った時には、どんなに体が辛くても、ヒラリと起き上がり、背筋をピンっと整え、「お忙しい所、すみません」と私に気を使う君の姿に、私は、少し複雑な気持ちになりました。

君が息を引き取る少し前、枕元にいた私は、本当は君が最後に誰といたいのかな、と、思いを巡らせていました。生前、君とお酒を飲んだことを思い出し、主治医の先生に許可を取って、私は、アルコールを口にしながら、そんなことを君に問いかけていた時、君の呼吸が止まりました。

私が君と会ったのは、君が21歳の時でした。
飲むと明るい性格で、当時の君は、無敵状態になるまで酒を飲み、アニメソングを豪快に歌い、気付くと君の姿がなく、君を皆で探し回ると、寒空の下、必ず、見ず知らずの他人の家の玄関の前で眠ってしまっていたことをよく覚えています。

友人付き合いもよく、闘病生活の間も、お見舞いに来てくれる人が絶えず、闘病生活を支えてくれた多くの親友や仲間達の存在に感謝をし、「こうやって心から感謝出来るのも、病になったおかげです」と清々しい顔で話をしており、「僕の宝物は武道の仲間だ」と常々口にしていました。

日下君が自衛隊を退職し、この地にある空手道禅道会の研修寮に入寮し、3年間の研修生活を修了。仲間と寝起きと共にし、武道を普及し、青少年健全育成にも真剣に取り組みました。その頃の、君の教え子達はすでに成人し成長しています。子供達にとても好かれ、この地で培った人間関係はかけがいのないもになったことでしょう。自分で、「根なし草」と言っていたものの、この地が安らぎの場所になったんでしょうね。闘病生活も、武道の仲間がいるこの地を選びました。仲間と共に病気と闘い、様態が悪くなった時も、まわりの人が心配して、盛んに入院を勧めたものの、ここに戻りたいと言ってすぐに退院してきてしまいました。君が修行をした、この、飯田下伊那郡の土地をこよなく愛していた君を、私は不憫に感じていました。

5年前、空手道禅道会のフィリピン道場長となる為に、骨を埋める覚悟でフィリピンに渡り、又、青少年自立支援活動でも、ディヤーナ国際学園スタッフとして多くの生徒と携わり、真正面から生徒達にぶつかり、寝起きを共にし、自分の居場所を見つけました。生涯で今が1番働いているといい、時には円形脱毛症になりながらも、自分の生きる役割をはたし、現地スタッフと共に、皆を一つにまとめ、日下ファミリーを築いていきました。
日本に帰国後もフィリピンを恋しがり、奇跡的な回復を見せ、この間にも2回フィリピンへ行くことが出来、残してきた仲間達や教え子との再会を果たしました。今年の年末も、石原君とフィリピンに行くことを目標にしていました。

覚悟をしていたものの、この訃報に、皆、悲しんでいます。

諸行無常、生者必滅会者定離と申しますが、私達は誰もが、この世に生を受け、やがて終わる時の来る限られた命を生きています。
自分の命の終わりが見えた時、君もきっと恐怖や深い悲しみに包まれたのだと思います。
亡くなる2日前から、近頃一番落ち着くという、石原君の家に宿泊していたそうですが、半身浴をしたり、テレビを見て笑い、食べたい物をたくさん食べ、たくさん話をし、楽しい時間を過ごしていたそうですね。
珍しく、石原君に何度も礼を言い、幾度も謝っていた君は、おそらく、自分の死を予感したからこそ、世話になった仲間と、生きていることに感謝したのでしょう。

君はよく頑張りました。
石原君に、生まれ変わったらどんな人生を生きたいかを聞かれた時、笑顔で、
「また、同じ人生を選びたい」と言ったそうですね。
残された私達が出来る事は、これからも、君の志を継いで、武道の道の上で、青少年健全育成活動に邁進していくことです。
君の教えた多くの生徒達は、君の生き方と、君の命を通して、きっと自分の役割を果たし、懸命に生きていくだろうと信じています。

命は、目には見えない縁でつながっています。
また必ず君とは、会うことが出来ます。
安心して安らかに眠って下さい。


          平成23年8月11日  
          NPO法人 日本武道総合格闘技連盟
          空手道禅道会 首席師範 小沢 隆         


posted by dhyana at 13:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本サイドスタッフ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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